富山県朝日町のお土産として知られているのは、ヒスイ海岸にちなんだヒスイ羊かんや翡翠ジェラート、まめなけ市場に並ぶ地元の食材あたりでしょうか。
そこにもうひとつ、山でつくられているものがあります。笹川という集落で焼かれている炭です。
お土産として、炭は理にかなっている
食べ物のお土産には、賞味期限という制約があります。旅程の後半で買うか、日持ちするものを選ぶことになります。
炭にはそれがありません。一度炭にしてしまえば腐らないからです。
木のままなら数年で朽ちますが、炭にすれば何年でも置いておけます。しかも湿気さえ避ければ品質もほとんど落ちません。車のトランクに一日入れておいても平気です。

昔の人が炭俵に詰めて運び、蓄えたのも同じ理由です。腐らずにエネルギーを保存できる素材は、そう多くありません。
朝日町のどこで、誰が焼いているのか
町の中心から車で十分ほど、山にかこまれた笹川という集落があります。暮らしている人は二百四十人ほど。夏の夜には蛍が飛びます。
ここで炭を焼いているのは、いま二人だけです。
五十年以上前は違いました。どの家も山に入って炭を焼き、それで生計を立てていた。冬場には炭焼きの出稼ぎに行くほど盛んな土地でした。その後、燃料がガスや石油に移り変わるにつれて焼く人は減り、笹川の炭焼きは一度、途絶えかけています。
約三十年前、当時まだ若かった職人たちが自分たちで窯を築き、消えかけていた技術を受け継ぎました。それが今に続いています。

つまりこの炭は、朝日町に二人しかいない仕事から出てくるものです。数がありません。
贈られた人が困らないお土産か
お土産を選ぶとき、相手が使い道に困らないかは気になるところです。
炭は、バーベキューをする人なら確実に使います。しない人でも、下駄箱やクローゼットに置けば湿気とにおいを吸います。防災の備蓄としても働きます。停電しても、炭が一袋あればお湯が沸かせます。
「もらったけれど使い道がない」ということが起きにくい部類だと思います。
味に出る土産である理由
炭火で焼いた食材の味が変わるのは知られていますが、炭そのものの匂いが料理に移ることは意外と知られていません。
安価な炭には炭以外の成分が残っていることがあり、それが煙になって食材にまとわりつきます。笹川の炭は、火を入れてから五日間かけてしっかり炭化させるため、この匂いがほとんど出ません。
完全に炭化しきらない部分が、ほんの少し残るくらいがいい。
焼きすぎると「焼き炭」になってしまって、火持ちが悪くなる。
その境目を、煙の色と匂いだけで五日間見極める。この手間が、そのまま火の質になります。
ほたる炭は7kgで2,000円です。詳しくは市販の炭との違いにまとめました。
朝日町に来たなら
あさひ舟川の春の四重奏、ヒスイ海岸、小川温泉。朝日町には見どころがあります。その多くは海と川沿いにあります。
炭が生まれるのは、そこから少し山に入ったところです。同じ町の、あまり知られていないほうの風景から出てきたもの、という土産の選び方もあります。
笹川という集落については、こちらのページで紹介しています。