炭の性質は、原料の木でほとんど決まります。同じ窯で同じように焼いても、ナラの炭とサクラの炭は別ものです。
富山県朝日町・笹川の土窯では、里山の広葉樹を伐って黒炭を焼いています。長年扱ってきた三つの樹種について、違いを説明します。
ナラ:迷ったらこれ、の総合力
ナラは、炭の原木として最も標準的な木です。
火力があり、火付きもよい。強すぎず弱すぎず、立ち上がりも素直です。バーベキューでも七輪でも扱いやすく、笹川では総合力で◎をつけている木です。
ホームセンターで「ナラ炭」と表示された国産炭を見かけたら、それは定番中の定番だと思って構いません。

ケヤキ:火持ちと火力の木
ケヤキは、火持ちがよく、火力も非常に強い木です。
そのぶん、少し火付きが悪い。密度の高い木は火が回るまでに時間がかかります。立ち上がりの遅さを、長く強い火で取り返すタイプです。
じっくり火を使う料理や、長時間の焼き物に向いています。
サクラ:香りの木
サクラの炭は、料理に使うと非常によい香りが出ます。
燻製に使う桜チップと同じ理屈です。炭になっても木の個性は残り、焼いている食材にほのかに移ります。魚や鶏を焼くときに、この香りが効きます。
ほたる炭は、三種を混ぜて焼いています
笹川では、この三種を特に選り分けず、混ぜて一つの「ほたる炭」として焼いています。
理由は、原木の調達方法にあります。地主さんに許しをもらった山に入り、チェーンソーで伐り出せる広葉樹を使う。単一の樹種だけを大量に集めるやり方では、里山は使えません。
結果として、一袋の中にナラの扱いやすさ、ケヤキの火持ち、サクラの香りが混ざります。火付きのよい炭で起こし、密度の高い炭が長く支える。混ざっていることが、使い勝手の面では利点になっています。

樹種より先に、見るべきものがあります
ここまで書いておいて逆のことを言うようですが、売り場で炭を選ぶとき、樹種の前に確認すべきことが二つあります。
- 原木の炭か。おが炭・成型炭は木くずを固めたもので、樹種以前に性質が違います
- 炭化が中心まで届いているか。断面の放射状の割れ目と、叩いたときの乾いた音で分かります
どんなに良い木でも、急いで焼けば爆ぜる炭になります。笹川では火入れから5日間、煙の色と匂いだけを頼りに窯を見つづけます。竹内さんは言います。
頼りになるのは、煙の色と匂いの変化だけ。
樹種の個性は、丁寧な炭化があってはじめて生きます。
使う場面から選ぶなら
- 手早く火を起こして焼きたい → ナラ中心の炭
- 長時間、強い火を保ちたい → ケヤキの混ざった炭
- 香りで食材を引き立てたい → サクラの混ざった炭
ほたる炭は三種の混合なので、この三つの場面をひと袋でまかなえます。焼き上がりの性質は市販の炭との違いに、原木を伐るところからの工程は炭ができるまでにまとめています。