土窯で黒炭を一窯焼くのにかかる時間は、火入れに5日、冷ますのに7日、合わせて12日です。
木を伐るところから数えれば、さらに前から始まっています。富山県朝日町・笹川の窯で実際にやっている工程を、順番にすべて書きます。
工程1:山で木を伐り出す
炭焼きは山から始まります。地主さんに「切ってもいい」と言われた山に入り、チェーンソーで自分たちで伐り出します。
伐るのは、ナラ・ケヤキ・サクラといった里山の広葉樹です。里山の広葉樹は切り株からまた芽が出て育つので、周期を守って伐れば山は荒れません。木を伐ることが山を守ることになる理由は、トップページにも書きました。
工程2:規定の長さに切り揃える
伐り出した木は、窯に入る規定の長さに切り揃えます。長さが揃っていないと、窯の中に隙間なく立てられず、炭化にむらが出ます。
太い木も細い木も、このときに仕分けながら整えていきます。

工程3:窯に木を立て、火を入れる
切り揃えた木を窯の中に立てて詰め、焚き口で火を焚きます。木そのものに火をつけるのではありません。焚き口の熱で窯全体の温度を上げ、木を蒸し焼きにしていきます。
ここから5日間が、炭焼きの本番です。
工程4:5日間、煙と匂いで火を守る
土窯に温度計はありません。頼りになるのは煙突から出る煙の色と匂いだけです。
その変化を読みながら、焚き口と排気口の大きさを変えて空気の量を調整します。空気が多ければ木が燃えてしまい、少なければ中心まで炭化しません。
完全に炭化しきらない部分が、ほんの少し残るくらいがいい。
焼きすぎると「焼き炭」になって、火持ちが悪くなる。
竹内さんがこう言うとおり、炭化は進めすぎてもいけません。止めどきを見極めたら、窯を密閉して空気を断ち、火を消します。黒炭はこのように窯の中で消火する炭です。

工程5:7日間、窯を冷ます
火を消してすぐには開けられません。窯の中はまだ高温で、ここで空気が入れば炭は燃えて灰になります。
7日間、窯が冷めるのをただ待ちます。急ぐ方法はありません。
工程6:窯出しと袋詰め
窯を開け、焼き上がった炭を運び出します。窯出しは、いま笹川で炭を焼いている竹内伸さんと折谷孝良さんの二人の仕事です。かつてこの集落には二十人ほどの炭焼きがいました。
運び出した炭は切り揃えて袋に詰め、7kgのほたる炭になります。

12日という時間は、削れません
一窯に12日。量産するなら、この時間を削るしかありません。実際、安価な炭の多くは機械窯で短時間に焼かれています。
時間を削れば、中心まで炭化しきらない炭になります。それが爆ぜる炭、煙の出る炭の正体です。このあたりは炭が爆ぜる理由の記事に書きました。
12日かけた炭が使う場面でどう違うかは、市販の炭との違いにまとめています。ほたる炭の火持ちと匂いの少なさは、この12日間の結果です。