ほたる炭読みもの

あなたのバーベキュー炭は、どこの木でできているか

窯場に積まれた原木と、袋詰めされた炭

ホームセンターで炭を買うとき、袋に何が書いてあるか見たことはあるでしょうか。

多くの場合、書いてあるのは内容量と「バーベキュー用」くらいです。どの木から作られ、どこで焼かれたのかは、書かれていないことがほとんどです。

富山県朝日町・笹川で炭を焼いている立場から、確認できた数字だけを使ってこの話を書きます。

欧州の調査では、150製品の46%から熱帯材が出ました

ドイツのテューネン研究所が、欧州11か国で売られているバーベキュー炭150製品の樹種を顕微鏡で同定しています。2020年の査読論文です。

結果は、約46%から熱帯・亜熱帯の樹種が検出されました。スペイン・イタリア・ポーランド・ベルギーでは60%を超えています。

なぜこうなるかというと、欧州の炭の規格に樹種や原産地の表示義務が無いからです。規格が定めているのは、塊炭なら固定炭素75%以上、成型炭なら60%以上といった数値と、化石炭やプラスチックを混ぜてはいけないという禁止事項まで。木がどこから来たかは問われません。

この状況を受けて、EUは森林破壊防止規則の対象品目に木炭を明記しました。制度が後から追いついてきた形です。

窯場に積まれた原木
窯場に積まれた原木

日本が輸入している炭のこと

日本の数字も見ておきます。2023年の木炭輸入量は112,297トン。同じ年の輸出は269トンです。主な輸入相手国は中国、マレーシア、インドネシア、ベトナムの順でした。

マレーシアについては、具体的な研究があります。ペラ州のマタン・マングローブ林保護区は約40,288ヘクタール。1902年から施業記録が残る、世界でもっとも長く管理されてきたマングローブ林です。30年周期で伐採し、炭に焼く。

その論文にこう書かれています。炭の生産量の約80%が日本へ輸出されている、と。

ただし、単純化はできません

ここで「バーベキュー炭がマングローブを滅ぼしている」と書きたくなるところですが、事実はそう単純ではありません。

マタンの林は100年以上にわたって管理されてきた実績があり、研究も持続可能性を一定程度は認めています。ただし近年、収量を維持するために保護区へ伐採が入り込んでおり、長期の持続性が損なわれつつあるとも指摘されています。

そしてマングローブ全体で見ると、減少の主な原因は製炭ではありません。2000年から2020年の喪失のうち43%は、養殖池・アブラヤシ農園・稲作への転換によるものです。

炭が主犯だと書けば話は分かりやすくなりますが、それは事実ではないので書きません。

世界の炭は、レジャーの道具ではありません

もうひとつ、押さえておきたい事実があります。

FAOによれば、世界の木炭生産量は2023年で約5,900万トン。そのうち65%がアフリカです。そして世界では約21億人が、直火や非効率なコンロで日々の食事を作っています。

つまり世界で焼かれている炭の圧倒的多数は、週末のバーベキュー用ではなく、生活のための調理燃料です。日本の「炭火は贅沢」という感覚は、世界的にはかなり特殊な位置にあります。

袋を開けたほたる炭
袋を開けたほたる炭

笹川の炭がどこから来ているか

私たちの場合を書きます。

原木は、地主さんに「切ってもいい」と言われた山に入り、自分たちでチェーンソーで伐り出します。樹種はナラ・ケヤキ・サクラといった、里山によくある広葉樹です。それを規定の長さに切り揃え、土窯に立てて焼く。

里山の広葉樹は、根元から伐っても切り株から芽が出て、また育ちます。林野庁の資料によれば、黒炭の原木となるナラの伐採適齢は20〜30年程度。この周期で伐って、また育てる。

いま焼いているのは竹内伸さんと折谷孝良さんの二人です。かつてこの集落には二十人ほどいました。二人で焼ける量には限りがありますが、そのぶん原木がどの山から来たかは全部分かります。

安い炭が悪いという話ではありません

屋外で短時間、大人数で使うなら、価格優先で構わないと思っています。それは国産炭と外国産の違いにも書きました。

ただ、袋に何も書かれていない炭を選ぶとき、その情報が無いこと自体が一つの情報だとは言えます。産地も樹種も書けない事情が、どこかにあるということですから。

ほたる炭の袋には「朝日町笹川産」「原木堅木使用」と刷ってあります。それは性能の話ではなく、どこから来たかを言える炭かどうかの話です。詳しくは市販の炭との違いをご覧ください。


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