「高級炭」という言葉に、決まった定義はありません。
ただ、値段の高い炭には共通の理由があります。原料の木・炭化にかける時間・人の手。この三つのどれかに、確かにコストがかかっています。
富山県朝日町・笹川で土窯の黒炭を焼く立場から、値段の中身を分解します。
高い炭の代表格は備長炭です
炭の最高級品として知られるのは、紀州備長炭に代表される白炭です。
高い理由ははっきりしています。原料のウバメガシが限られた地域にしか育たないこと、800℃以上の高温で焼くため窯の消耗が激しいこと、そして真っ赤な炭を窯から掻き出して消す窯出しが過酷な作業であることです。
焼き鳥屋や鰻屋が備長炭を選ぶのは、何時間も一定の強い火力が続くからです。プロの道具としての値段だと言えます。
土窯の黒炭が高くなる理由
黒炭にも、安いものと高いものがあります。差はほぼ時間と人手です。
笹川の土窯では、一窯に火入れ5日・冷まし7日の12日がかかります。火入れの5日間は、温度計のない窯を煙の色と匂いだけで見つづけます。
完全に炭化しきらない部分が、ほんの少し残るくらいがいい。
焼きすぎると「焼き炭」になって、火持ちが悪くなる。
この止めどきの見極めは機械にできないので、人が窯のそばにいるしかありません。かつて20人いた笹川の炭焼きは、いま竹内伸さんと折谷孝良さんの2人です。量産できない構造が、そのまま値段になります。

安い炭が安い理由
逆から見ると分かりやすくなります。ホームセンターの数百円の炭は、次のどれかで安くしています。
- 成長の速い木(マングローブなど)を使う
- 機械窯で短時間に焼く
- おがくずを固めて成型する
どれも間違いではなく、用途に合えば十分です。ただし短時間で焼いた炭は中心まで炭化しきらず、煙が出たり爆ぜたりします。国産炭と外国産の違いに詳しく書きました。
「高級」の中身を見分ける三つの点
値段に見合う炭かどうかは、表示と現物である程度分かります。
- 原料:「原木」「広葉樹」の表記があるか。樹種(ナラ・カシなど)が書いてあればなおよい
- 断面:放射状の割れ目は、熱が中心まで届いた印です
- 音:叩いて乾いた軽い音がすれば、よく炭化しています

値段は「1回あたり」で考える
高い炭は、実は使ってみると差が縮みます。火持ちがよいので本数が減り、灰が少ないので後片付けも軽くなります。
ほたる炭は7kgで3,800円(税込・送料込み)です。kg単価では安い炭の数倍ですが、火持ちと、雑味のない澄んだ香りと、爆ぜない安心を含めた値段です。中身の詳細は市販の炭との違いにまとめています。
高級かどうかより、何にお金を払っているのかが分かる炭を選ぶことをおすすめします。