炭化とは、空気を絶った状態で木を熱し、燃えやすい成分をガスとして抜き、炭素の骨格だけを残すことです。
木を「燃やす」のではありません。燃やせば灰になります。燃やさずに蒸し焼きにするから、炭が残ります。
富山県朝日町・笹川の土窯で黒炭を焼いている立場から、窯の中で何が起きているのかを説明します。
燃焼と炭化は、正反対のことです
たき火で木を燃やすと、木の成分は酸素と結びついて熱と光になり、あとには灰しか残りません。
炭化は逆です。酸素を断って熱だけを加えると、木の成分は燃えずに分解します。水分が抜け、ガスになる成分が抜け、最後に炭素のかたまりが残ります。これが炭です。
だから炭焼きの仕事は「火をつける」ことではなく、「燃やさずに熱を通しつづける」ことです。

窯の中では、温度ごとに違うことが起きています
木の主成分は、ヘミセルロース・セルロース・リグニンです。それぞれ分解しはじめる温度が違います。
- 約180℃から、ヘミセルロースが分解しはじめます
- 275℃前後から、セルロースが分解しはじめます
- 280℃前後で分解が一気に進み、一酸化炭素・水素・炭化水素がガスになって抜けていきます
黒炭は、この分解を経て約400〜700℃まで上げ、窯の中で空気を断って消火します。温度が一気に上がる瞬間があるのは、この280℃前後の急な分解のためです。
なぜ5日間、つきっきりなのか
笹川の窯には、温度計がありません。自動制御もありません。それでも火入れから5日間、窯のそばを離れられません。
頼りにするのは、煙です。竹内さんは言います。
頼りになるのは、煙の色と匂いの変化だけ。
煙の色と匂いは、窯の中の分解がいまどの段階にあるかを外に伝えてくれる、唯一の手がかりです。それを見ながら、焚き口と排気口の大きさを変えて空気の量を調整します。空気が多すぎれば木は燃えて灰になり、少なすぎれば炭化が中心まで届きません。

どこで止めるかが、炭の質を決めます
炭化は、進めれば進めるほど良いわけではありません。
完全に炭化しきらない部分が、ほんの少し残るくらいがいい。
焼きすぎると「焼き炭」になって、火持ちが悪くなる。
止めるのが早すぎれば、生の成分が残って煙が出る炭になります。遅すぎれば、すかすかの焼き炭になります。ちょうどよい境目は数字では示せず、煙と匂いで判断するしかありません。
この見極めは、本を読んで身につくものではありません。竹内さんも、人についていき、仕事を見ながら少しずつ体で覚えたと言います。炭焼き歴は約15年になります。
よく炭化した炭の見分け方
売り場や手元の炭でも、炭化の良し悪しはある程度見分けられます。
- 断面に放射状の割れ目が入っていれば、熱が中心まで届いた印です
- 叩くと乾いた軽い音がすれば、水分とガス成分がよく抜けています
- 火をつけたとき煙が出つづける炭は、分解しきっていない成分が残っています

炭化の質は、使うときに表れます
炭化が中心まで届いた炭は、火持ちがよく、匂いが少なく、爆ぜません。ほたる炭の性質は、5日間の見極めの結果です。詳しくは市販の炭との違いと炭ができるまでの工程にまとめています。
炭化とは、木を燃料に変える化学変化であると同時に、止めどきを人が判断する仕事でもあります。窯のそばで過ごす5日間が、その判断のすべてです。