ほたる炭読みもの

富山県産の炭を探している方へ。県内でいま焼いている場所の話

富山県朝日町笹川で煙をあげる炭焼きの土窯

「富山 炭」で探している方の多くは、県内でつくられた炭を買いたいのだと思います。

先にお伝えすると、富山県で木炭を焼いている生産者はごくわずかです。産地としての知名度でいえば、和歌山の備長炭や岩手の黒炭が圧倒的で、富山は炭の県ではありません。

そのうえで、朝日町の笹川という集落では今も焼いています。この記事は、その現場の話です。

富山県産の炭を選ぶ意味はあるのか

正直に言えば、「県産だから性能がいい」ということはありません。炭の質を決めるのは産地名ではなく、原木と焼き方です。

意味があるとすれば、次の二つだと思っています。

  • どの山の、どんな木から焼かれたかが分かること
  • 輸送距離が短いこと

ホームセンターの安価な炭の多くは外国産で、原木の樹種も産地も表示されません。使う側からすると、火のつき方や火持ちを予測できないということです。

窯出しで炭を運び出す
窯出しで炭を運び出す

笹川の炭は、どの木から焼いているか

使うのは、里山に育つ広葉樹です。地主さんに許しをもらった山に入り、チェーンソーで自ら伐り出します。

樹種によって、火の性格がはっきり変わります。

  • ナラ(楢) — 火力があり、火付きもよい。扱いやすさでは一番で、黒炭の代表的な原木です
  • ケヤキ(欅) — 火持ちがよく火力も非常に強い。そのぶん少し火が付きにくい
  • サクラ(桜) — 料理に使うと、とてもよい香りが立ちます。燻製のサクラチップと同じ香りです

笹川では、これらを選り分けずに混ぜて一つの炭として焼いています。一袋の中に性格の違う炭が入っているので、火起こしのときは細めのものから使い、太いものを後から足すと安定します。

土窯で焼くと、何が違うのか

炭窯には土でつくるものと、コンクリートや鉄でつくるものがあります。笹川は土です。

土窯は温度計も自動制御もありません。火を入れてから五日間、窯につきっきりで、煙の色と匂いの変化だけを見ながら焚き口と排気口の大きさを変え、入る空気の量を調整します。そのあと七日間かけて冷ます。一窯で十二日かかります。

頼りになるのは、煙の色と匂いの変化だけ。

この工程を経た炭は、内部までしっかり炭化しているのでぜません。火の粉が飛ばないので、屋外でも室内の七輪でも扱いやすくなります。

よく炭化した炭の断面
よく炭化した炭の断面

断面に放射状の割れ目が入っているのが、中心まで熱が届いた印です。

量は多くありません

かつてこの集落には二十人ほどの炭焼きがいました。いまは二人です。高齢化が進み、山に入って窯を焚ける人がいなくなりました。

二人で焼ける量には限りがあります。大量に安く供給するタイプの炭ではありません。ほたる炭は7kg・2,000円で、焼けた分だけをお出ししています。

どう使い分けるか

県産にこだわらず大量に使うなら、市販の安価な炭で十分な場面もあります。屋外で短時間、火加減を細かく気にしない用途ならそうです。

一方で、魚や肉の味を炭の匂いで邪魔したくない、あるいは火の粉を飛ばしたくない場合は、しっかり炭化した炭のほうが確実です。

炭の性能差については市販の炭との違いに、焼き方の全工程は炭ができるまでにまとめています。