炭を燃やし切る前に消すと、消し炭になります。
消し炭は、燃え尽きた灰とは違い、炭素の骨格がまだ残っています。捨てずに、次の火起こしに使える燃料です。
バーベキューや七輪で炭が余ったとき、多くの人は燃え尽きるまで放っておくか、そのまま処分してしまいます。消し炭にすれば、灰との違い・保存のしかた・次の火起こしでの使い方まで、余った炭を無駄なく活かせます。
富山県朝日町・笹川で炭を焼く立場から、消し炭の性質と使い方について書きます。
消し炭と灰は何が違うのか
炭を最後まで燃やし切ると、白い灰になります。灰は炭素が燃え尽きたあとの残りもので、それ以上は燃えません。
消し炭は、その手前で火を止めた状態です。炭素の骨格がまだ残っているので、再び火をつければ燃えます。
見分け方は単純です。黒い部分が残っていれば消し炭、白くさらさらの粉末になっていれば灰です。
放っておいた炭も、いずれは自然に燃え尽きて灰になります。消し炭にするかどうかは、その手前で止める一手間があるかどうかの違いです。

消し炭はどうやってできるのか
消し炭は、燃えている途中の炭から空気を断つとできます。フタ付きの金属容器に入れる、灰をかぶせるなど、空気を遮る方法が一般に知られています。
火が燃えつづけるには酸素が要ります。酸素を絶てば、炭はそこで燃えるのをやめ、内部に炭素を残したまま冷えていきます。
消した直後の炭は、内部にまだ熱がこもっていることがあります。手で触れる前に、十分冷めているかを確かめてください。
窯で炭を焼くときも、止め時の見極めが仕上がりを決めます。笹川で炭を焼く竹内伸さんは、火入れについてこう言います。
焼きすぎると「焼き炭」になってしまって、火持ちが悪くなる。
家庭の消し炭も、理屈は同じです。燃やし切る前に止めることで、まだ使える炭素を無駄にせずに済みます。
なぜ消し炭は火が点きやすいのか
消し炭は、新品の炭より火が点きやすいという性質があります。
一度火が入ったことで、着火の妨げになる水分や余分な成分は、すでに抜けています。表面にも燃えた跡の凹凸ができ、火が回りやすくなっています。
新品の炭は、火が安定するまでにこの下準備の時間がかかります。消し炭はその工程を一度終えているぶん、次の着火が速く進みます。
次に炭を使うとき、消し炭を種火代わりにすると、着火にかかる時間を短くできます。
使い残した炭の保存方法
消し炭も、炭であることに変わりはありません。炭素の骨格でできているので、腐ることはありません。
湿気を避けて乾いた場所に置いておけば、次に使うときまで劣化しません。炭が腐らない理由は、消し炭にもそのまま当てはまります。
ただし、消し炭は普通の炭より軽く、もろくなっていることがあります。持ち運ぶときは、崩れないよう注意してください。
新品の炭とは分けて袋や容器に入れておくと、次に使うとき迷いません。少量ずつ余ることが多いので、まとめておく習慣をつけておくと便利です。
大きさもばらばらになりがちです。崩れやすい細かい破片と、まとまった大きさの塊を分けておくと、次に使うとき選びやすくなります。
次の火起こしでの使い方
消し炭は、次の火起こしの着火剤代わりになります。
火起こしの手順では、細い炭を着火剤の周りに立てかけると書きました。消し炭は、この細い炭の役目をちょうど代われるものです。
火の点きやすい消し炭を下に置き、上から新しい炭を重ねると、着火剤の量を減らせます。灰まで燃やし切ってしまうより、途中で止めておくほうが、次の一回が楽になります。
キャンプや庭先で少人数の火を起こすときにも、消し炭一つで十分な種火になります。着火剤を切らしたときの備えとしても役立ちます。

消し炭にしなくてもいいとき
残った炭がひとかけらだけ、というときは、無理に消し炭にする必要はありません。
量が少なすぎると、次に種火として使うほどの量になりません。そのまま自然に燃え尽くしてもらって構いません。
反対に、まとまった量が残ったときは、消し炭にしておく価値があります。次のバーベキューや七輪で、着火剤を減らせる分だけ手間が省けます。
残った炭を無駄にしないために
笹川では50年以上前、どの家も山で炭を焼いて生計を立てていました。当時は今よりずっと、燃料を最後まで使い切るのが当たり前だったはずです。
消し炭は、その考え方をそのまま受け継いだ使い方です。燃え残りではなく、まだ働ける炭として扱うだけで、次の火起こしが一段楽になります。
灰になってしまえば、燃料としてはそこで終わりです。その手前で火を止める一手間が、炭を最後まで使い切る分かれ道になります。
灰にも、庭や畑にまく、掃除に使うといった使い道がありますが、それはまた別の話です。燃料として使えるうちは、消し炭のまま活かすほうが理にかなっています。
ほたる炭は、笹川の土窯で堅木を12日かけて焼いた黒炭です。使い切れずに残った分も、消し炭にすれば無駄になりません。