ほたる炭読みもの

バーベキューの炭は3タイプから選ぶ

炭火のコンロで肉や野菜を焼いている様子

「バーベキュー 炭 おすすめ」で検索すると、何十種類もの商品を並べたランキング記事が出てきます。この記事はランキングではありません。

私たちは富山県朝日町・笹川で炭を焼いている作り手です。バーベキューという場面に絞って、炭の選び方を正直に書きます。

結論から言うと、バーベキュー用の炭は黒炭・オガ炭・成形炭(白炭)の3タイプに整理して考えると選びやすくなります。どれが優れているという話ではなく、その日の条件に合っているかどうかです。

バーベキューの炭に、何が求められるのか

炭の種類を用途全般で比較した内容は、炭のおすすめは用途で決まるにまとめました。この記事では、そのうち「バーベキュー」という場面だけを切り出して考えます。

バーベキューに共通する条件は、だいたい次の3つです。

  • 屋外で、決まった時間内に人数分を焼き切りたい
  • 火起こしに慣れていない人が扱うことが多い
  • 煙や匂いは、屋内ほど気にせずに済む

人数や時間によって必要な炭の量は変わりますが、量の計算より先に、当日の条件に合うタイプを決めておいたほうが、火起こしの段取りがぶれません。

店頭やネット通販のパッケージには、たいてい「黒炭」「オガ炭」「成形炭」「備長炭」といった表記があります。この呼び方が、だいたいこの3タイプに対応しています。この条件を踏まえて、それぞれの向き不向きを見ていきます。

黒炭が向くバーベキュー

早く火をつけて、すぐ焼きはじめたいバーベキューには黒炭が向いています。

黒炭はナラやケヤキなど、原木を炭化させた炭です。火つきが早く火力も強いので、炭火に慣れていない人でも扱いやすいタイプです。

笹川では、ナラ・ケヤキ・サクラといった里山の広葉樹を、特に選り分けずに混ぜて焼いています。ナラは火つきと扱いやすさに優れ、ケヤキは火持ちと火力が強く、サクラは料理によい香りをつけます。3種類の木が混ざるぶん、太さや性質が少しずつ違う炭が一袋に入ることになります。

ただし黒炭は、焼き方次第で品質に差が出やすい炭でもあります。竹内伸さんは、炭化の見極めについてこう話します。

焼きすぎると「焼き炭」になってしまって、火持ちが悪くなる。

炭化が浅くても、逆に焼きすぎても、火持ちや火力は落ちます。黒炭を選ぶときは、樹種や産地だけでなく、しっかり炭化しているかどうかも見てほしい点です。

黒炭の断面。放射状の割れ目が入っている
黒炭の断面。放射状の割れ目が入っている

黒炭と白炭では、炭化のさせ方そのものが違います。詳しくは黒炭と白炭の違いに書きました。

はじめてバーベキューをする人が多い集まりや、子どもと一緒に火を見る時間を大切にしたい日には、この火つきの早さが助けになります。着火からそう待たずに焼きはじめられるので、待ち時間で場が持たなくなる心配が少なくて済みます。

オガ炭が向くバーベキュー

煙を抑えて、長めの時間じっくり焼きたいバーベキューにはオガ炭が向いています。

オガ炭は、製材のときに出るおが屑を固めて炭化させた成型炭です。原木の黒炭と違って太さや密度がそろっているため、火力にむらが出にくいという特徴があります。

そのぶん、着火には黒炭より時間がかかります。炭火に不慣れな人が多い集まりでは、火起こしに手間取ることも見込んでおく必要があります。庭先など近隣との距離が近い場所でのバーベキューでは、煙の少なさが助けになる場面もあります。

火力が急に強まりにくいぶん、火の管理に気を配る余裕が生まれるのも利点です。ただし着火に時間がかかることは、当日の段取りにあらかじめ組み込んでおいたほうが安心です。

成形炭・白炭が向くバーベキュー

何時間も安定した強い火力を保ちたいバーベキューには、成形炭や白炭(備長炭)が向いています。

白炭は高温で焼き締めた炭で、火持ちの長さでは他の2タイプに勝ります。ただし着火には時間と技術が必要で、慣れていないと火が育たないまま時間だけが過ぎることもあります。

年に数回のバーベキューで使うには、少し負担の大きい選択です。長時間の宴会や、一定の火力を保ちたい料理を予定している日に向いています。火持ちの決まり方は炭の火持ちは何で決まるのかにまとめました。

職場の懇親会や、何十人分もの食材を数時間かけて焼きつづけるような日には、この持続力が生きてきます。逆に、2〜3時間で解散する少人数のバーベキューでは、着火にかける手間のほうが負担になりやすいタイプです。

3タイプに共通して言えること

どのタイプを選んだあとも、共通して言えることが一つあります。炭は使い切れなくても、無駄にはならないということです。

炭は一度炭化させれば、腐らずに何年でも保存できる燃料です。日本では縄文期より前の遺跡からも木炭が見つかっているといわれ、炭化という技術そのものが、燃料を保存する古い知恵として使われてきました。

バーベキューで余った炭は、湿気を避けて保管しておけば、次に使うときにそのまま火起こしに使えます。タイプを迷って多めに用意しても、無駄になる心配はあまりしなくてよいということです。

笹川で焼いているのは黒炭です

私たちが炭を焼く富山県朝日町・笹川では、50年以上前はどの家も冬場に炭を焼いて生計を立てていました。時代の変化とともに炭焼きをする人は減り、一度は途絶えかけましたが、約30年前、当時まだ若かった職人たちが窯を立ち上げ直しました。

いまこの窯で炭を焼いているのは、竹内伸さんを含めて2人だけです。焼ける量には限りがあり、私たちが選べたのは黒炭という1タイプに絞ることでした。

窯出しで作業する竹内伸さんと折谷孝良さん
窯出しで作業する竹内伸さんと折谷孝良さん

ほたる炭は、ナラ・ケヤキ・サクラの原木を土窯で5日かけて焼く黒炭です。早く火がつき、炭火に不慣れな人でも扱いやすいという黒炭の性質は、家族や友人とのバーベキューという場面に合わせて選んだ結果でもあります。

袋に入ったほたる炭のパッケージ
袋に入ったほたる炭のパッケージ

どのタイプの炭を選ぶにしても、その日のバーベキューの条件に合っていれば、それが正しい選び方だと思います。人数も、時間も、集まる人の顔ぶれも、毎回のバーベキューで違います。ランキングの1位を探すより、当日の条件から逆算して選ぶほうが、結局は失敗が少ないはずです。