ほたる炭読みもの

炭火の香りはどこから来るのか。ごちそうと雑味を分けるもの

コンロの中で赤く熾ったほたる炭。炎を上げずに安定して燃えている状態

炭火で焼いた肉や魚が美味しいのは、なぜでしょうか。

火の入り方だけではありません。研究で測定されているのは、香りです。炭火で焼いた食材からは、ガス火で焼いたものより香ばしさのもとになる成分がはっきり多く出ています。官能検査でも、匂いに有意な差が出ました。

つまり炭火のごちそうは、かなりの部分が香りでできているということになります。

富山県朝日町・笹川で黒炭を焼いている立場から、その香りの話を書きます。

炭の香りには、二種類あります

ここが肝心なところです。炭にまつわる香りは、ひとつではありません。

ひとつめは、ごちそうのほうの香り。 炭火で焼くことで生まれる香ばしさ。それに、原木の樹種そのものが持つ香りが加わります。これは料理をおいしくする方向に働きます。

ふたつめは、雑味のほうの香り。 炭化しきっていない炭を燃やすと、木の成分が残ったまま燃えて煙が出ます。この煙が食材にまとわりつくと、すすっぽい、こもったにおいになります。

「炭火は好きだけど、炭くさいのは苦手」という感覚があるとすれば、それはたいていふたつめのほうです。

同じ「炭のにおい」という言葉で語られていますが、中身はまったく別のものです。

網の下で赤く熾る炭。炎も煙も上がっていない
網の下で赤く熾る炭。炎も煙も上がっていない

雑味は、焼きが足りない炭から出ます

なぜ煙が出る炭と出ない炭があるのか。答えは炭化の深さです。

木を炭にするとき、内部の成分が熱で分解して抜けていきます。この分解が中心まで届いていれば、燃やしても出てくるのは熱だけです。届いていなければ、残った成分が燃えて煙になります。

急いで焼けば、外側だけ炭になって中心が生のまま残ります。だから安価な炭ほど煙が出やすい。同じ理由で爆ぜも起きます。煙が出る炭と爆ぜる炭は、原因が同じです。

固定炭素率という指標があります。木炭の規格では黒炭で75%以上、白炭で85%以上と定められています。この数字が高いほど、燃やしたときに余計なものが出てこないことを意味します。

五日かけるのは、そのためです

笹川では、火入れから五日間、窯につきっきりで火を守ります。土窯に温度計はありません。頼りは煙の色と匂いだけです。

頼りになるのは、煙の色と匂いの変化だけ。

窯から出る煙は、いま中で何が起きているかを外に伝える唯一の手がかりです。分解が進むにつれて、煙は色を変え、匂いを変えていきます。それを読みながら、焚き口と排気口の大きさを変えて空気の量を調整します。

五日が過ぎたら、七日かけて冷ます。一窯に十二日です。

この時間を削れば量は増やせます。ただし中心まで炭にならない。煙の出ない炭を作るために十二日かけている、と言ってもいいと思います。

煙をあげる土窯
煙をあげる土窯

焼きすぎてもいけません

ややこしいのは、長く焼けばいいという話でもないことです。

完全に炭化しきらない部分が、ほんの少し残るくらいがいい。
焼きすぎると「焼き炭」になって、火持ちが悪くなる。

これは何十年も窯を焚いてきた人たちが言い伝えてきたことです。焼きすぎた炭はすかすかになり、あっという間に燃え尽きます。

止めるべき境目がある。その境目を、煙と匂いだけで五日間見極めつづける。炭化温度の話にも書きましたが、上げつづければいいわけでも、長く焼けばいいわけでもありません。

サクラの香りが混ざります

ほたる炭には、もうひとつ香りの要素があります。

原木はナラ・ケヤキ・サクラといった里山の広葉樹です。これらを特に選り分けず、混ぜて一つの炭として焼いています

このうちサクラは、料理に使うととてもよい香りが立ちます。燻製に使うサクラチップと同じ、あの香りです。竹内さんに樹種の話を聞いたとき、サクラについてはまず香りの話が出てきました。

ナラは火力と火付きのバランスがよく、扱いやすさで言えば一番。ケヤキは火持ちがよく火力も強い代わりに、少し火が付きにくい。それぞれ性格が違います。樹種ごとの違いにまとめました。

選り分けないのは、そのほうがいいからです。ナラの扱いやすさ、ケヤキの火持ち、サクラの香り。ひと袋の中に全部入っています。

香りを味わいたいときの使い方

香りは、火の使い方でも変わります。

  • 炎が上がっているうちは待つ。 立ち上がりの炎には、まだ落ち着かない成分が混じっています。表面が白い灰をかぶって、熾(お)き火になってから食材を乗せます
  • 食材を近づけすぎない。 炭火は熱の多くを放射で伝えます。遠火にしたほうが、こげずに香りが乗ります
  • 脂の多い食材は火から少しずらす。 落ちた脂が燃えて出る煙は、炭の香りとは別ものです

七輪のように食材と炭の距離が近い道具ほど、炭そのものの質が結果に出ます。屋内に近い場所で使うなら、なおさらです。

袋を開けたほたる炭
袋を開けたほたる炭

消すのではなく、澄ませる

以前、私たちは「においが少ない炭です」という言い方をしていました。間違ってはいませんが、大事なところが抜けていたと思っています。

炭火の香りは、消すべきものではありません。それこそが炭火で焼く理由です。

余計な煙を出さないのは、香りを消すためではなく、炭火本来の香りを濁らせないためです。雑味が引くと、残った香りが澄んで立ちます。

ほたる炭は7kgで3,800円(税込・送料込み)。ほかの炭より香りが良いと言い切るだけの比較データは持っていません。言えるのは、五日かけて雑味を出しきった炭だ、ということだけです。

そのほかの特徴は市販の炭との違いに、工程は炭ができるまでにまとめています。


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